Club Pelican

Swan Lake in Tokyo 5

2003年3月28日(昼公演)

主要キャスト。白鳥/黒鳥:アダム・クーパー、王子:アンドリュー・コルベット、女王:マーガリート・ポーター、執事:スティーヴ・カーカム、ガールフレンド:フィオナ=マリー・チヴァース。

そろそろ気力も体力もネタも尽きてきたので、これまでの思い出話っていうか、まとめみたいになってきちゃうと思う。

第1幕で出てくるあの超カワイイ犬、ウェルシュ・コーギーについて。彼(?)の出番は2回ある。初めは士官にリードを持たれて、はふはふ、と走り出てくるシーン。ちなみにこのシーンでの士官の顔がよい。観客に向かって肩をすくめてみせ、「やれやれ」といった白けたような表情をする。特にあの小柄なダンサー・・・あれ?誰だ?あの顔はすぐ分かると思ったのに・・・。あのね、眉が弓なりにぴんとはね上がっている、色の白い、すごいきれいな子。あの子は白鳥の群舞もやっていて、顔と体型に似合わず踊りが力強くて鋭いんだけど、演技も抜群。コーギー犬を連れた士官役も担当していて、その時のあの顔はとてもみものだ。

でもこのコーギー犬、時々ご機嫌斜めになるらしくて、スネてでもいるのか、出てこないことが何回かあった。ある日、「キャストの都合により」開演が10分ばかり遅れたことがあったのだが、主役級のダンサーにはキャスト表に書いてるのと変更はなく、誰が都合悪くなったのかと思っていたら、このコーギー犬が姿を見せなかった。なかなか気むずかしいスターらしい。2回目の出演は、王室一家がバレエ鑑賞に赴く直前のシーン、女王や執事、王子が舞台奥に消えていくとこ。ガールフレンドがコーギー犬に気が付いて、「ま〜、カワイイ」とばかりに撫でようと手を差し出す。すると、コーギー犬、がるる、と彼女の手に噛みつこうとする。ガールフレンドはあわてて手を引っ込める。ここで観客は例外なく大笑いしており、ヤツは顔はカワイイがけっこう演技派である。

またまたリチャード・クルトについてです。彼の担当する役柄は、執事と白鳥の群舞(「大きな白鳥」の一人)である。今日は白鳥の群舞として参加していた。執事だとどんな踊りをする人なのかちょっと分かりにくいんだけど、白鳥だと動きの特徴とかが割とはっきりする。クルトが「大きな白鳥の踊り」で踊っていると、他の3人の若いダンサーと全然動きが違うのがすぐに分かる。

「大きな白鳥の踊り」は、いかにも分かりやすくマッチョでパワフルな振付なので、あまりにみえみえに力任せだと、大仰な感じがしてちょっと興ざめする。が、クルトは力強いけどパワーやスピードに引きずられることなく、ちゃんと自分の力や動きをコントロールしているのが分かる。脚は高くぴんとはね上がるが、きちっきちっとポーズが静止する。AMPにはさまざまなダンス・ジャンルの背景を持ったダンサーが参加しているようだが、バレエの背景を濃厚に持っているらしいダンサーに特徴的なのは、速いスピード、激しい動きであっても手足の動きの線が切れないこと、一連の動きが連関していて断絶することがない点、そして力の制御が効いている点である。

今回の公演に参加しているAMPのダンサーには、ゲーハーが数人いる。ゲーハーだと、わたくしにとっては個体を識別しやすいマークとなるので、わたくしは割とゲーハーダンサーが好きである。しかも、ゲーハーのダンサーに限っていいのが多いようだ。たとえば、ゲイリー・クラーク(Gary Clarke)もすばらしい。

今日の王子はアンドリュー・コルベット。キャスト表を見てやったー!!と思った。この人は大柄だし動きがパワフル。私はどうも大きくてパワフルな人が好きみたい。それにクーパーと組むと、身長的にちょうどいい。相手がベン・ライトやトム・ワードだと、クーパーの方が背高いから、特にクーパーがリフトされる瞬間はちょっと冷や冷やする。これを書いている今は4月3日なんだけど、今日昼公演の王子はトム・ワードで、クーパー君、「タンゴ」のシーンで、二人の身長差を利用して、ちょっと面白いことをやっていた。また後日、感想で書きますね。

ベン・ライトはどうやらもう帰国しなければならないらしい(帰国しちゃったのか?)。それで、おとついの夜の公演が、私がライトの王子を観た最後の公演となってしまった。ちょっと残念ではあるけれど、でもご苦労さまでした。いいパフォーマンスをみせてくれてありがとう。ライトは本当にすばらしかった。スコット・アンブラーとはまた違った、彼独自の王子を見せてくれました。繊細で線の細い美少年系の王子。私の中にしっかりと定着しましたよ。

クーパー君、昨夜の公演に出なかったので、体調を崩したのか、まさかケガでもしたのかと不安だった。でも動きやポーズ、バランスが非常に安定していたので、そうではないらしいと安心した。おそらく、大阪公演で予定よりも1回多く出演したことで、出演日程の調整が行われたのだろう。

1日とはいえ充分な休みをとれたせいか、クーパー君はすごく余裕たっぷりに踊っていた。安定している、というのが、この日のクーパー君の踊りの第一印象。何度も観ていて分かってきたのは、疲れっていうのはたとえどんな偉大なダンサーであっても出るもんだ。でも私はこのとおり単純な人間なので、ダンサーにはとかく超人的であることを要求してしまう。少しのミスも許さない、とか、疲れをみせるな、とか。私はまだまだ典型的な白黒思考だ。

さて、また私の楽しみにしているシーンにいくかな。なるほど、私にとってもうこの「白鳥の湖」は、過去のものになりつつあるらしい・・・。もちろん、いい意味で。

第2幕、王子の前に現れた白鳥たちの群れの先頭で、クーパー君が「おいでおいで」をするシーン。目をかっと見開いて、「近づけるものなら近づいてみろ」と王子を睨みつける。でも人間みたいにガンつけてるんじゃなくて、・・・鳥は普段、黒目がちのかわいい瞳をしてるけど、威嚇するときはどんなに不気味な目になるか見たことある?無表情で、白目の部分が大きくなって、黒目の部分がしゅーっと縮む。クーパー君白鳥、映像版に比べると、本当に動物的になった。ヘタな人間味が消えた。

白鳥たちの「ジグザグ入場」の前に、あの白鳥が舞台の奥で例の「白鳥アラベスク」をして、王子の前から消える。このシーン、映像版よりもゆっくりで、ポーズの持続が長い。クーパー君白鳥、腕をゆっくりと旋回させながら、同時に右脚を上げる。地に着いている左脚は、まだ半爪先立ちにはなっていない。音楽が一瞬途絶えて静かになる。クーパー君、ゆっくりとつま先立ちになる。そのまま静止。そうして真横に伸ばしている右手だけを、かすかに上下に揺らす。「ジグザグ入場」の音楽が始まる。クーパー君は、身体を伸ばしながら更につま先立ちになる。そのまま彼の身体が斜めにかしいだ瞬間、あの白鳥は舞台右へとさっと姿を消す。

第3幕、今日はどれにしようか。黒鳥クーパー君と3人の王女とが踊る「ロシアの踊り」。ゆっくりとしたヴァイオリンのソロが終わり、突如として速くて激しい音楽が始まり、黒鳥の青年がソロで踊り出すシーンね。ほらほら、みなさん、お好きでしょ〜?クーパー黒鳥が両手をわっと振り上げながら、ガールフレンドに一瞬近づいて、それから振り上げた両腕を膝にパン、と叩きつけ、ガールフレンドに笑いかけながら、さあ、おいで、というように両手を広げる。あのポーズ、映像版よりもカッコよくない?カッコいいでしょ?両手を広げる動きがゆっくりで、あのタイミング。実にいいっスよね。

追加公演は今日が最終日だから、クーパー君は来週の再追加公演が始まるまで、数日の休みがあるはずだ。休日らしい休日は、この1ヶ月余り、まったくとれていなかっただろう。よかったよかった。先月末の本公演での時点に比べて、クーパー君は明らかに体がひとまわり痩せてしまった。白鳥の時は体が細くなったのが目立つし、黒鳥の青年の時はズボンがぶかぶかになってしまっている。短期間にはっきり目に見えるほど痩せてしまうのは、あまり好ましくないことだ。ちゃんと食べて眠っているのだろうか?私はてっきり、彼は割と要領がいいし図太いんじゃないかとばかり思っていたが、彼のサイトの「日記」で、彼が実はすごい「気ぃ使いさん」で、意外と神経質で繊細らしいことが分かったので、すこし心配になった。ちゃんと休めよ。(でもこいつ、翌日さっそくバレエ鑑賞に出かけたらしい。好きな演目じゃないんなら、別に観に行かなくてもいいと思うんだが。休めっちゅうに。じゃなきゃお花見にでも行きなさい。)


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