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Stories

新国立劇場バレエ団
「カルミナ・ブラーナ」(“Carmina Burana”)

(2005年10月29日、新国立劇場オペラ劇場、東京)

by sai


本日日本初演の「カルミナ・ブラーナ」を観てきました。新国立劇場も初めてで、その素晴らしさにうっとりしました。新国立は音響といい、格といい、すべて一流だと思いました。

さて、最初の「ライモンダ」は、プティパの振り付けでクラッシックバレエらしい演目でした。以前、スターダンサーズバレエ団にいらした厚木三杏さんがすばらしいスタイルで踊りました。コール・ドもよくそろって、日本のバレエも進歩したなと思いました。

「カルミナ・ブラーナ」は後半の一時間の舞台でした。私としてはまず、運命の女神フォルトゥナを演じた、バーミンガム・ロイヤル・バレエのシルヴィア・ヒメネスの圧倒的な存在感のあるダンスに久々に感動しました。

ビントリーの振付は、クラッシックが基本でありながら、とても美しいスタイルの新しいダンスでした。ひとつひとつの動きがシャープで無駄がなく、最近の振付で有名なキリアンともマッツ・エックとも違い、独特の美しい振付でした。

また、バレエと歌のコラボというのも初めてで、とてもよかったです。オケあり、独唱(なんとカウンターテナーはブライアン・アサワでした)あり、合唱ありで、オペラとバレエを一緒に観たようなお得な気持ちになりました。歌詞は訳詞でしかわかりませんでしたが、おもしろい歌詞です。

人間の性(さが)を描いていながら、こむずかしくなく、ストーリーがすんなり入ってくるのもうれしいことでした。そしてなにより、新鋭の振付にありがちな(マッツ・エックのような?)奇異な感じは全くなく、無条件に美しい振付で何度もダンスに見とれました。

振付を自分のものとしてしっかり踊っていたダンサーのみなさんもすばらしかったです。やはり、バーミンガム・ロイヤル・バレエのメンバーの踊りは飛び抜けてすごかった。踊り込んでいるというか、役の解釈も毅然としていたからだと思います。

これ以上はネタばれになるので、また語りたいと思っています。こんなにすばらしい作品とは久しぶりに巡り会いました。ビントリーはすばらしいコレオグラファーです。マクミランともまったく異なる個性です。他の作品も観てみたいなー。やはりイギリスに行かなきゃ観れないかな?

空席の件ですが、やはり一階席(SSかS)でも少し空席がありました。マチネだったせいか、なぜかお年を召した方が多かったです。私としては、若者にみてほしいなぁと思います。近くの席に、セカンドキャストで運命の女神を踊る湯川麻美子さんもみていました。あの迫力ある、すごい存在感の役をどう演じるか楽しみです。

カーテンコールにはビントリー本人も現れました。あびさんが書いていらしたように、ロビン・ウ ィリアムスにちょっと似ていました!


パリ・オペラ座バレエ団
「白鳥の湖」(ヌレエフ版)

(2006年4月22日、東京文化会館)

by sai


会場はマチネということもあり、そんなにおめかししてる人もなく、フランクな感じでした。ダンサーやバレエ関係の方も少なかったかも。

まず、最初の印象は、白鳥(オデット・オディール、コール・ド)の影が薄かったことです。王子(ジークフリード)と家庭教師(ヴォルフガング/ロットバルト)のからみというか関係があやしかったです。私は、マシュー・ボーンを思い出しました。なぜか舞台のセットも 両脇に3本の大きな柱が配置してあり、似ていました。お正月の新国立の舞台とは、全く違った「白鳥の湖」だと思いました。

新国立では、ザハロワの印象があまりにも大きく、私の中では彼女の白鳥を越えるダンサーはなかなかいないと思っています。身体能力、プロポーション・・・どれをとってもザハロワの白鳥は完璧でした。オデットだけでなく、オディールの迫力あるあでやかな妖艶さは、パリ・オペのムッサンの白鳥からは感じ取れませんでした。

ムッサンは出産後ということもあり、体力的に余裕がないように見えました。華奢で繊細なオデットでしたが、オディールは悪の要素が感じられず、色が黒に変わっただけのようでした。ずいぶん昔からムッサンは好きなダンサーだったので、エトワールになることができてうれしかったのですが・・・。ザハロワがすごすぎたのかもしれません。

また、3階席だった(?)せいか、トゥシューズの音がうるさいくらい大きくびっくりしました。後でバレエ鑑賞初心者の夫が、コール・ドがそろっていないから余計に音が大きく聞こえたのではと言っていました。そうかも。足だけでなく、ボールド・ブラもバラバラでした。これってフランス人の個性なのか、単にそろっていなかったのか、わかりませんが。新国立のコール・ドの方が美しかったです。

ヌレエフの振付は、全体的にうるさかったです。パもステップも複雑で、複雑すぎて(?)美しくないのです。そのため、踊りについていけてない感じでした。マクミランのようにステップに感情が表されているということもなく、私には理解できませんでした。フォーメーションも独特で、もっとすっきりしてもいいんじゃないかなと思っていました。

愚痴っぽくなりましたが、あのチケットの値段なら新国立の方がずっとよかったと思いました。ストーリーは悲劇で、王子が約束を破ったため、ロットバルトは王子からオデットを永遠に引き離し、王子は絶命する。最後にロットバルトはオデットと共に空へ昇っていくのですが、マシュー・ボーンの最後とだぶりました。そのときのオデットのいでたちが、クリオネに白い衣装をつけたような、えーっ、という演出でした。

私としては、ジークフリードにロットバルトをうち破って欲しかったな。なんだか すご〜く暗くて救いようのないラストでした。マシュー・ボーン版では、アダム(白鳥)が王子を抱えて空に昇ることで少しは救いがあったのに、ヌレエフ版では、王子が悲劇的すぎる!

ヌレエフ版はわたくしの好みでははかったようです。終わってから、全幕もの初挑戦の夫は大変お腹がすいたようで、ケーキセットにピザまで平らげていました。感想を聞くと「男だけの踊りが多かったね。」(す、すごい!ヌレエフ版の真骨頂を見抜くなんて。)、「踊りがそろってなかった」(その通り)、「王子が演技下手」(突然新エトワールのエルヴィ・モローに変わった)、「 オーケストラが入るんだね」(ふつうはそうだ。オーチャードホール以外は)・・・などなどでした。

すみません。長くなりました。でも、マシュー・ボーンは絶対にヌレエフ版を観て影響を受けているであろうと思いました。


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