Club Pelican

Stories 14

「危険な関係 ( "Les Liaisons Dangereuses")」
日本公演感想集(長野編)

by Hiro


2005年2月22日

日曜日の深夜に名古屋を見に行った方から「6時にキャストをのせたバスが長野に向けて出発した!」という情報が入ったときから、私の挙動不審が始まりました。

まさかその日中に長野に入るとは(しかもバスで)思ってなかったので、心の準備ができてなかったんですね。いてもたってもいられず、ホールまで出かけていきトラックの到着を確認してきました。われながらアホです。

しかし、あれだけの舞台装置を運ぶんですからトラックも10台ですよ!なんだか大映のテレビドラマかってくらいに、それはそれは精悍な眺めでした。もうホントに裏方のみなさんのご苦労にも頭が下がります・・・

それにしてもロンドンでもレスターでも東京でも感じたことはなかったのに、この土地のおそらく半径2kmくらいの狭い範囲にアダムが来てるかと思うと眠れませんでした。幸いに?月曜日はムチャクチャ仕事が忙しく、深夜まで会社に拘束されてましたので、これ以上おかしな行動をせずに済みました。

で、キャストは、アダム(ヴァルモン子爵)、サラ(・ウィルドー、トゥールヴェル夫人)、サイモン(プレヴァン/神父)、ヨランダさん(メルトイユ侯爵夫人)、カッツさん(ロズモンド夫人)、ウェンディさん(ヴォランジュ夫人)、ナターシャ&ダニエル(セシル&ダンスニー)、バーネビ(ジェルクール伯爵)、と残念ながらセカンドでした。

たった1回の公演なので、長野の人々にせめてサラ・バロンさんのメルトイユ侯爵夫人を観て欲しかったです。客席は心配したとおり、かなりの空席でした(泣)。

舞台ではヨランダさんのメルトイユ侯爵夫人が初めてでしたが、ウェンディさんのヴォランジュ夫人はこまやかで素敵!と思ったですけど、ヨランダさんは特に印象には残りませんでした。やはりサラ・バロンさんが恋しかったです。

楽屋口でオフを楽しんだらしいサラ・バロンさんと少しお話できました。ストライキは起こしてないと思われます(チャウ注:私がHiroさんへのメールで、「こんなハード・スケジュールでは、キャストがストライキを起こすんではないか」と冗談を言ったのです)。

この日お休みだったキャストは、野沢温泉で温泉に浸かるサルを見て、旅館に泊まってきたらしいです(これ外国の方はお好きですね)。休みをくれたアダムはいい人だ!と言ってました。

そんなわけで、アダムとサラをかなり集中して観れました。サロンでのソロでは、この客席にいるすべての人を引き込むぞ!(とアダムが思っていたかはわかりませんが)という気合が感じられました。(私の気のせいだろうか)

アダムはとても丁寧に踊っていましたし、コントロールできない自分の感情に苦悩するヴァルモンが痛いほど伝わってきました。やはり、あの日サイモンのヴァルモンを見てから変わりましたよね。

復活したサラ(ウィルドー)を見たのが初めてだったので、サラ登場の場面で拍手したかったくらいです。とにかく復帰が嬉しかったです。二人のデュエットがわりと激しく感じたのは私が久しぶりのせいか、いや違うと思います。

なにか以前より、ヴァルモンもトゥールベル夫人もデュエットの間は自分の心の変化にとまどわず、苦悩から開放され、ただ無心に求め、喜びを表すという感が強くなった気がします。

私のお連れした方々は、予想以上によかった、あなたがハマる気持ちが少しわかった、めったに見れないものを見せてもらったなどなど、誘ってくれてありがとうという意見が多かったです。

ただ、「どうだった?」の質問に対して、アダムがよかった、という答えの人はいなかったですね。この辺が、チャウさんの言われる(チャウ注:Hiroさんへのメールで書いた)「自分を見て欲しい」からの変化なのでしょうか?感想は作品のストーリーに関することが多かったです。

私はあらかじめプログラムの解説部分をコピーして渡していました。ある友人が持っていたのはその情報だけ。一緒に来ただんなさんは何の情報もなしで観に行ったとのこと。でも、「契約」の内容が分かりにくくて、相手の胸に手を当てたり、口に手を当てたりしてるのが分からなかった夫に彼女が説明してあげると、「つながったあ!」って喜んでた!なんて言ってました。

このご夫婦はちょっとマニア系の匂いのする夫婦なんですが、奥さんはとにかく本好きで、本の世界でのお約束事を熟知してるのでしょう、普段めったに観劇はしなくても、ハンデにならなかったようです。やはりその人の今までに培ってきたものって何をしても出るんだな、とびっくりしました。

そんな話を聞くと、私とは明らかに鑑賞の質が違います。私はやっぱり音です。私の楽しみはフレーズをどう踊るのか、であり、曲を聴いて自分の中でモヤモヤと感じていることが体で表現されている瞬間がたまらなく好きです。

たとえばデーミアン&ヘレン組はセシルとダンスニーの夜の密会?のシーンで、ふたり同じ振り付けで踊る時に左足だったかな?のひざから先を曲に合わせて弧を描くように踊ります(ダニエル&ナターシャはしてませんでした)。そんなちょっとしたことが私は大好きです。アダムらしい振り付けなのかな?と勝手に思ってます。

私の隣で観てた同僚(女子)は、ヴァルモンが天蓋から降りてくるシーンで、「天蓋からおりてくんのかっ!」と声に出して言ってました。あのシーンでしゃべる人も珍しい!とびっくりしましたが。サラ(ウィルドー)にはまりそう、アダムはもっと踊っているところを観たかった、という意見も聞きました。

これで、サラ・バロンさんが出ていたら、ますますアダムについての感想は聞かれなかったかもしれませんね。友人たちにしてみれば、今日のメルトイユ侯爵夫人も十分イケてた、とのことでしたが。せっかくなので、あらためて感想を聞かせて欲しい、とリクエストしているところです。

サイモンについて、私の知り合いはどうしてあんなに厳しいのか、わかりません。

彼はたった1回しか踊るチャンスがなかったじゃないですか。慣れれば解決される問題ばかりだったと思います。アダムは自分で振付けてるんですし、できて当たり前ですよね。私はサイモンが踊った時の自分のドキドキ感を大切にしたいです。

近いうちにアダム&サイモンのダブルキャストで(サイモンがそう望んでいてほしいと思いますが)、この公演を観たい!と勝手に思っています。

で、どうせなら・・・、ロンドンじゃない、たとえばニューヨークあたりで観たいですね。だってロンドンで公演すると決まってもそれはごく当たり前、この作品ではもっと攻めてほしいです。美術、音楽、演劇、ダンス・・・、きっとどんな分野の人をも唸らせることのできる作品だと思います。

きっとアダムも「これはイケる!」と自信をもったんじゃないでしょうか?舞台で挨拶するアダムの顔にそう書いてある気がします。

大阪、楽日に行ってきます。お疲れ様、とありがとうの拍手を送ってこようと思ってます。


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