Club Pelican

NOTE

「ガイズ・アンド・ドールズ」
"Guys And Dolls"

第二幕。アデレイドの勤めるクラブ、ホット・ボックスのステージ。ショウが始まる。大きなスリットの入った紫のドレス、白いファーのストール、真珠の長いネックレスを身につけた踊り子たちが次々と現れ、最後にアデレイドも現れて、踊りながら"Take Back Your Mink"を歌う。心変わりした男を責める歌で、アデレイド役のSally Ann Triplettのパフォーマンスが楽しい。

「あなたが私からすべてを取り上げようとしているなんて、まるで悪夢のようだわ!」と歌った後、踊り子たちはファーのストールで体を包んで震え上がる。アデレイドはストールで顔を隠し、「ふんがっふっふ」(←サザエさんか)と奇妙なうめき声を上げながら脚をバタバタさせる。が、ストールから顔を上げたアデレイドは、何事もなかったかのようにニッコリ微笑み、「だ・か・ら」と色っぽくささやき、再び歌い始める。

あなたからのプレゼント、ドレスも真珠も帽子も靴もミンクも、みーんな返すわ、他の女にくれてやりなさいな、と歌いながら、踊り子たちは後ろを向き、ストールで上半身をくるむと、下に着ていたドレスをストン、と脱いでしまう。下はピンクのランジェリーのみ。彼女たちは前に向き直り、ストールをバスタオルのように使って胸を隠しながら踊り、それから後ろを向くとストールも脱ぎ捨てる。

ひえ〜、みんな上半身裸だ!でも後ろを向いているからムネ本体は見えない。でも、みんな美しい背中をしているわ〜。アデレイドたちは顔だけを客席のほうに向けて歌うと、上半身を左右に揺らして踊りながらカーテンの向こうに消える。と思った瞬間、踊り子たちは後ろ向きのまま、またステージに戻ってきて、脱ぎ捨てた衣装を抱えて胸を隠し、「じゃ、バイバイ!」と叫んで退場する。ひゃ〜、こんな明るいセクシー・パフォーマンスを見せてもらえるなんて、なんか新鮮な感覚だわ〜。同じ女だけどドキドキ。

ショウが終わって、クラブの人々は閉店の準備を始める。そこにスカイがふらりと現れる。スカイは硬い表情で席につく。ナイスリーが気まずそうにやって来る。ナイスリーはネイサンからアデレイドへの伝言を託されてきたのだった。ナイスリーはスカイに、昨夜の勝負で大損したビッグ・ジューリが再勝負だと言ってきかないため、今夜も賭場が開かれることになったと話す。そのためネイサンとアデレイドの結婚は再延期になってしまい、ナイスリーがその伝達役を押し付けられたのだ。

外出の身支度をしたアデレイドが現れる。彼女は今夜ネイサンと結婚式を挙げるために旅立つつもりでいる。ナイスリーは「あわわわ、ネイサン、ピッツバーグ、おばさん」と意味不明なことを言って逃げ去ってしまう。アデレイド「ちょっと、何を言っているのよ!?」

スカイの姿を見つけたアデレイドは嬉しそうに話す。「スカイ、ネイサンはここに来てるんでしょ?あたしたち、今夜結婚するのよ。」 だがスカイは表情を変えずに、ネイサンはここには来ないと言う。

アデレイドはたちまち悲しそうな顔になり、「・・・また、ギャンブルね」と言って泣き出す。「彼は変わってくれると約束したのに!」 スカイは言い返す。「変わる、変わる?君は、ネイサンをどういうふうに変えたいんだ?」 アデレイド「あたしはただ、普通の暮らしがしたいだけよ。彼らみたいな、まっとうな人々になって、まっとうな生活をして!」 アデレイドは言いながら客席を指し示す。観客が大笑いする。自分たちがまっとうな人間でまっとうな生活をしている?アタシはしてないな。

スカイは「ネイサンのような男は、いや、俺みたいな男も含めて、女には変えられようがないんだ」と言い、また尋ねる。「なぜ、他のまともな男を選ばないんだい?」 アデレイドはしゃくり上げながらも、しっかりした口調で答える。「あたしが愛しているのはネイサンなのよ。あなたにも愛する人ができれば分かるわ。」

それを聞いたスカイは初めて微笑む。もう彼の心の中には「愛する人」がいる。スカイは分かるよ、という優しい表情でアデレイドの額にキスをして去る。う〜ん、やっぱりクーパー君のこういう微妙な表情の変化にも気をつけるべきだったわね。一人残ったアデレイドは"Adelaide's Lament"を低く口ずさむ。

場面は変わって、サラとアーバイドが現れる。アーバイドは意地を張るサラに、スカイを愛している自分の気持ちに正直になるよう諭し、"More I Cannot Wish You"を歌う。「お前はとうとう真実の愛を見つけた。力強い腕がお前を連れて行ってくれる。」 アーバイドの歌を聴いているうちに、サラの表情が和んでくる。

だが、そこへスカイとナイスリーが現れると、サラは再び硬い表情になってそっぽを向いてしまう。スカイはアーバイドに言う。「今夜、借用書どおり1ダースの罪人を連れてくる。」 しかしサラは「もうけっこうよ。昨晩、大勢のお仲間がここにいたんですもの。それで差し引きゼロでしょ?」と言って奥に引っ込んでしまう。アーバイドはスカイにドスをきかせて捨てゼリフを吐く。「絶対に罪人どもを連れてくるんだぞ。でなきゃ、お前が借金から逃げた、と言いながら街中を行進してやる。」 普段はお人好しなアーバイドおじさんのほほえましい脅し(?)に観客が笑う。

スカイはナイスリーに「どこで賭場を開いているんだ」と尋ねる。ナイスリーは床にあるマンホールの蓋を開けて、「こっちこっち」と中へ入っていく。スカイもその後に続く。

奥と左右の壁が開く。すると舞台の奥と左右両脇に、超巨大な下水道管がラッパみたいに大きく口を開けている。今度は下水道で賭場を開いていたのである。歌なし、セリフなしの「クラップシューターズ・ダンス(直訳『バクチ打ちの踊り』)」が"Luck Be A Lady"の音楽に合わせて始まる。男性による迫力ある群舞で、飛び跳ねたり、回転したり、腕を振り回したり、舞台を駆け回ったりと、力強いマッチョな踊りである。輪になって舞台上をぐるぐる回るのが面白い。

踊っているのはダンサーだけかな、と思ったら、なんとビッグ・ジューリもいて踊っているではないか!でも、いちばん後ろの隅だったけど。彼の踊りはやっぱりヘタだったが、短い手足を一生懸命にバタバタさせて踊っていて、これが超カワイイの♪

ギャンブラーたちは大きな輪になり、その中でサイコロを投げる人物がソロを踊る。片足だけでぐるぐる回ったり、両脚を広げて跳躍したり、また片脚で立って、もう片脚を後ろへゆっくりと広げて180度開脚したりという振りで、バレエの振りがかなり取り入れられていた。「クラップシューターズ・ダンス」を見ながら、あーあ、クーパー君がこの中にいれば、さぞしなやかで、なめらかで、しかも鋭いキレのある、美しい踊りを見せてくれるだろうに、とつい思ってしまった。

ソロを踊ったキャストがもう一人いた。意外にもビッグ・ジューリ役のNick Cavaliereである。「クラップシューターズ・ダンス」の曲が、途中でストリップ・ダンス用の音楽そっくりになる。ビッグ・ジューリは後ろを向き、お尻を片方ずつ振って踊り、札束を握った手をつつつ、と太ももに沿わせる。観客の間から笑いが漏れる。ダイス(サイコロ)を投げたビッグ・ジューリだが、負けてしまったようでしきりに悔しがる。

「クラップシューターズ・ダンス」が終わり、今晩のクラップ・ゲームもお開きとなる。ところがビッグ・ジューリは承知しない。ネイサンは「みんな疲れている。もう24時間も続けているんだから」(←これじゃギャンブル依存だよ)と断るが、ビッグ・ジューリは懐から銃を取り出してネイサンを脅す。ネイサンは仕方なくもう一度勝負するが、やはりビッグ・ジューリの負け。

ビッグ・ジューリは「今度は俺のダイスで勝負だ」と言い出す。ネイサンはビッグ・ジューリのダイスを確認して驚く。「このダイスには目がないじゃないか!空白だ!」 ビッグ・ジューリ「削り落としたんだ。幸運のためにな。でも俺には目が読める。」 つまり、最初からビッグ・ジューリが勝つと決まっているイカサマ用ダイスである。

ネイサンとビッグ・ジューリは勝負するが、当たり前のことに常にビッグ・ジューリの大勝ち。ビッグ・ジューリ「4と6、俺の勝ちだ!」 ネイサン「どっちが4でどっちが6だ?」 ビッグ・ジューリ「俺にも分からん!」 こうしてネイサンは稼ぎを根こそぎむしり取られてしまう。

ネイサンはついに怒りを爆発させる。「苦労して賭場を開いたんだぞ。こんな仕打ちはないじゃないか。大体、目のないダイスが読めるだと?イカサマもいいかげんにしろ!」 ビッグ・ジューリは銃口をネイサンに向ける。ベニーが止めに入るが、ネイサンは「いいとも、さあ撃てよ」と動じない。

ちょうどそのとき、奥にあるはしごをスカイがつたって下りて来て、「やあ、紳士諸君!」と挨拶する。床に下り立ったスカイは、「サラ・ブラウンの教会のことでみなに話がある」と言う。

ビッグ・ジューリはギャンブルをするつもりがないのなら出て行けとスカイに怒鳴る。スカイは笑って両手を差し出し、「では提案をしよう。こっちが俺の右手、こっちが俺の左手、利き腕はどっちだと思う?」 ビッグ・ジューリ「知るか!」 スカイは「じゃあヒントを教えよう」と言うなり、ビッグ・ジューリをぶん殴る。ビッグ・ジューリは床に倒れて気絶する。スカイはビッグ・ジューリの銃を抜き取るとネイサンに投げて渡す。

スカイはみなに救世軍の教会での集会に参加してくれるよう頼む。が、ネイサン以外に参加しようと申し出る者はいない。あきらめたスカイはネイサンに「ハバナの賭けはお前の勝ちだ」と言って1,000ドルを渡し、その場を後にしてはしごを上っていく。軍資金ができたネイサンは「今度は俺のダイスで勝負だ」と叫ぶ。ハリーが揶揄する。「そんなことしたら、ビッグ・ジューリの魂が救われない(また大負けする)ぜ!」

それを耳にしたスカイが叫ぶ。「今、何と言った?」 ハリー「???『ビッグ・ジューリの魂が救われない』と言ったんだ。」 スカイ「なるほど、それだ!」

スカイはみなに自分と賭けをしようと申し出る。彼は「お前らが賭けるのはお前らの魂だ」と言い、自分が負けたら各人に1,000ドルずつ渡す、みなが負けたらサラ・ブラウンの教会の集会に参加する、と提案する。ハリーが信じられない様子で言う。「つまり、俺たちが勝ったら1,000ドルずつもらえて、負けてもその教会の集会に出ればいいだけ、ってことかい?」 こうして全員がその賭けに乗る。

スカイが前に出てくる。彼はダイスを両の手のひらで転がしながら"Luck Be A Lady"を歌い始める。気まぐれな幸運の女神よ、どうか今ばかりはおとなしく自分の味方をしてくれ、という歌である。ダーク・スーツ姿のクーパー君は前を見つめ、時おり笑みを含んだ表情で、身振り手振りをまじえて歌う。またしても低音部の多い曲だがよく歌っている。若々しい爽やかな声音がいいぞ。

ギャンブラーたちが歌に加わり、同時に踊り始める。クーパー君は客席に背を向け、奥にいるギャンブラーたちの前まで歩いてゆく。それからばっと前を向くと、両手をポケットに突っ込み、腰を落とし、片膝を曲げて前に踏み出し、ギャンブラーたちと一緒にざっ、ざっ、と前に出てくる。この踊りは短かったが迫力があり、姿勢といい、歩き方といい、眼光の鋭さといい、クーパー君がいちばんカッコよかった(ファンの欲目です。お許し下さい)。

みなは再び大きな輪になる。スカイがその中央でダイスを投げようとしている。みなは「ダイスを投げろ!」と合唱する。"Luck Be A Lady"が終盤にさしかかる。みながスカイの周りに集まり、スカイは"Luck be a lady tonight!"とゆっくり伸ばして歌い終わる(最後はクーパー君、すごい高音を出して決める)と、ついにダイスを投げる。みなが一斉に「ハッ!」とかけ声をかけ、勝負が決まる。

もはや無用になった、結婚式のための荷物が入ったカバンを提げたアデレイドが道を通りかかる。すると、路上にあったマンホールの蓋が開き、中から男たちが次々と出てくる。不審そうな顔で眺めるアデレイド。彼女がおそるおそるマンホールの中をのぞきこむと、ちょうど中から出てきたネイサンと目が合う。

しかしアデレイドは「まあ、不思議なめぐり合わせね」と態度が冷たい。ネイサンは彼女をなだめるが、アデレイドは「大騒ぎはよしましょ。文明的に知的に別れましょう。あなたはもうまったく私の人生には関係ない・・・」と言ったところで、はっくしょん、とくしゃみをする。それがきっかけで、アデレイドはネイサンに泣きながらすがりつき、ネイサンは彼女を抱きしめて、「泣かないで。君が泣いているのを見るのは辛すぎるよ」と言う。

ネイサンはアデレイドに、今度こそ結婚して、君の好みの家に住もう、と約束する。さて結婚式に出かけよう、としたところで、マンホールの中からナイスリーとスカイが出てくるのを目にする。ネイサンはあちゃ〜、という顔。スカイは去り際に、ネイサンに向かって人差し指を立てて曲げ、ちゃんと集会に来るんだぞ、とばかりにネイサンを睨む。

ネイサンはそれを見るなり、「ごめん、やっぱり他に約束があるんだ。教会での集まりに行かなきゃならない」とアデレイドに言う。アデレイドは「今までついたウソの中で最大級だわ!」と激怒し、"Sue Me"を歌い始める。あなたは約束してばかり、でもそれを守ったためしがない、ギャンブルがすべて、いつでも賭け事ばっかり、私はこうして過ぎ去った時間を思うと死にたくなる。それに対してネイサンは、俺を訴えろ、憎んでくれ、嫌いになってくれ、警官を呼んでくれ、撃ってくれ、でも俺はお前を愛している、となだめるように歌い、最後に「お前を愛しているよ」と歌うと行ってしまう。

救世軍の教会。カートライト将軍、サラ、アーバイド、他の救世軍の面々が揃っている。カートライト将軍「罪人たちはやって来ないわね。」 サラが「将軍、私の力不足です。私が・・・」と言いかけたところで、教会の外が騒がしくなる。そして両の扉がバン!と勢いよく開き、大勢のガラの悪いギャンブラーたちがどやどやと教会に入ってくる。スカイが彼らの前に出て叫ぶ。「みんな座れ!」

スカイは時間に遅れたことを救世軍の人々に詫び、またギャンブラーたちに向かって、今後はネイサンがスカイ・マスターソンの代表者であり、みながネイサンの指示に従わなければならない、と告げる。言い終わると、スカイはサラを一瞬じっと見つめ(このときのクーパー君の表情がカッコいい)、そのまま何も言わずに教会を出ていく。カートライト将軍は「すばらしい若者だわ!」とサラに向かって感嘆したように言う。

ネイサンが立ち上がり、帽子をぬいで静かにするようみなに命じる。カートライト将軍が挨拶する。「今日はこんなにたくさんの罪人たちが集まってくれて、まことにけっこうなことです。」 ネイサンが先頭に立ってみなが拍手する。将軍は続けて言う。「しかもみな人相の悪い、筋金入りの罪人ばかり。」 ネイサン一人がつい拍手するが、みなが静まり返っているのに気づくと、決まり悪げな顔で椅子に座る。カートライト将軍は各自が自分の話をするよう勧める。

みなは不満の声を上げて嫌がるが、ネイサンが命令する。「ベニー、お前からだ。」 ベニーは渋々立ち上がり、すばやい口調で話す。「俺はこれまで悪い人間で悪いギャンブラーだった。これからはいい人間でいいギャンブラーになりたい。」 ネイサン「次はビッグ・ジューリ!」 ビッグ・ジューリは自慢げに話す。「俺はガキのころからギャンブルをしてきて、これまで33回逮捕されたが、1回も有罪判決を受けてない!」

次にハリーが話し始める。「スカイが俺たちの魂を賭けさせたとき・・・」 言いかけたところで、カートライト将軍が「それはどういうこと?スカイとは?」とハリーに尋ねる。サラは「私がお話しします」と言い、ギャンブラーたちがここへ来たのは、スカイとギャンブルをして負けたからだ、と説明する。カートライト将軍は目をみはって驚く。しかし将軍は「すばらしい!巧みな戦術だわ!ブラウン軍曹、よくやってくれました」と褒める。サラの表情が緩む。

教会の扉が開き、ブラニガン警部補が乗り込んでくる。ネイサンに指を突きつけて何か言おうとしたところで、警部補はいつもと違う雰囲気に気づき、キョロキョロと左右を見渡す。みなは帽子を胸に当てて姿勢を正す。ネイサンが警部補の帽子をぬがし、自分に突きつけられた指に引っかける。ネイサンは「ナイスリー!」と叫び、ナイスリーに話をさせようとする。ナイスリーはうじうじとためらっていたが、自信なさげに立ち上がって前に出る。「あの、ゆ、夢、夢の話なんだけど・・・」

ナイスリーがほとんどかすれた声でささやくように"Sit Down You're Rockin' the Boat"を歌い始める。「俺は昨夜夢をみた。俺は天国行きのボートに乗っていた。そして、たまたまサイコロを握って・・・」 気弱そうなユーモラスな演技と歌声に観客が笑う。が、次にナイスリー役のMartyn Ellisの口から飛び出してきたのは、ビンビンに響く声量の豊かな歌声。「そして俺は立っていた。そして叫んだ。『誰かが俺をダメにしちまう!』」

みながベンチを並べてボートに見立て、その上に乗って合唱し始める。「座れ、座れ、座れ、お前がボートを揺らしているんだ!」 リズムよく歌っているナイスリーとギャンブラーたちにつられて、いつしか救世軍の人々、ブラニガン警部補もギャンブラーたちの輪に加わり、手足を振って踊り、歌い始める。ギャンブラーが救世軍の女性兵士と踊り、カートライト将軍やブラニガン警部補も足や手でリズムをとって踊りだす。

最後は全員が舞台いっぱいにひしめいて歌い踊り、にぎやかな雰囲気の中で"Sit Down You're Rockin' the Boat"が終わると同時に、みなは何事もなかったかのように元の位置に戻り、ナイスリーも歌が始まる前の位置に立つ。観客は大興奮、会場は大きな拍手喝采に包まれた。いちばん盛り上がったのは、この"Sit Down You're Rockin' the Boat"だった。

ブラニガン警部補がサラに尋ねる。「昨日の晩、ここで博打をやっていたのはこの連中でしょう?あなたは見たはずだ。」 だが、サラは「私は今まで生きてきて、この人たちを見たことはありません」と否定する。ビッグ・ジューリが叫ぶ。「すばらしい女だぜ!」

警部補はあきらめて教会を去る。ネイサンがサラに言う。「ありがとう。でも、昨夜ここで勝手に賭場を開いてしまって、本当に申し訳なく思ってる。」 ビッグ・ジューリがまた叫ぶ。「ほんとにすまねえ!」 ネイサンはサラをハバナへ連れ出して物にできるかどうか、スカイと賭けたことについても謝る。「でも賭けは俺が勝った。あいつはあんたを連れ出せなかった。だからよかった。」

サラは驚く。「あなたが賭けに勝ったの!?」 ネイサン「ああ、彼はそう言っていた。」 サラは、スカイがそうしようと思えばできたのに、あえて自分に手を出さなかったことを知る。カートライト将軍が「さあ、賛美歌を歌いましょう」とギャンブラーたちに言う。超ヤンキーな賛美歌の歌声が響く中、サラはそっと教会を出ていく。

朝になり、新聞屋が路上に新聞の束を次々と置いていく。旅行用のカバンを提げたアデレイドが、悄然として街をさまよっている。彼女はかばんの上に座り、頬杖をついて考え込む。そこへ、スカイを探しにサラがやって来る。ここで面白かったのが、アデレイドは"Adelaide's Lament"をゆっくりと口ずさみ、一方サラは"I've Never Been in Love Before"を同時に口ずさんでいて、この2つの曲が見事にハモっていてきれいだったことである。

サラを見つけたアデレイドは彼女に声をかける。だがサラはアデレイドのことを覚えていない。サラはあわてて言う。「アデレイドよ!ほら、ネイサンの婚約者で結婚する予定の!」

事のいきさつを知らないサラは「おめでとう」と言う。アデレイドは少しヤケ気味に言う。「でもダメになったの。」 サラはアデレイドの隣に座り込み、彼女を励まそうとする。「元気出して。ほら、『イザヤ書』にもあるじゃない・・・」 だが、「イザヤ」という語を口にした途端、サラはスカイのことを思い出して「イザヤ・・・」と泣き出す。アデレイド「かわいそうに。あなたの恋人はイザヤっていうのね。」 会場が爆笑する。

アデレイドとサラは意気投合し、決意の歌、"Marry The Man Today"を一緒に歌いだす。今日、彼と結婚するわ。結婚したら彼を変えるわ、逆らうようだったら腕づくでも言うことを聞かせるわ(ここで二人はファイティング・ポーズをとってジャブを連発する。観客は爆笑)、そして彼に優しくしてあげるの、男のせいでため息をついたり悩んだりするのはもう真っ平、結婚して彼の生き方を変えるわ、明日から!最後、二人は歌いながら両手をつないで回る。

街角で人々が新聞を読んで驚いている。舞台の奥から白いブーケを持った花嫁の一団が現れ、前に進み出てくる。アデレイドと同じく待たされていた彼女たちも、ようやく今日結婚できるのだ。彼女たちはそれぞれの花婿と抱き合って喜ぶ。そして、白いスーツに白いヴェールのついた帽子、花嫁のブーケを持ったアデレイドが舞台の奥に現れ、前に進み出てくる。

みんなが揃う。が、アデレイドの隣には肝心のネイサンがいない。人々がいぶかしむ中、天上から鉄の足場が降りてくる。その上には工事作業用のヘルメットをかぶり、オーバーオールの作業着を着た一人の男が乗っている。なんとネイサンである。ガテン系の仕事についたらしい。

ネイサンが花婿の正装に着替えている間、救世軍の賛美歌の歌声が近づいてきて、救世軍の一行が姿を現わす。その最後尾でドラムを叩いているのは、まぎれもなくあのスカイ・マスターソンである。身につけているのも救世軍の赤い制服と軍帽。この制服と軍帽がクーパー君に実に似合わず、いや〜っ!やめてえー!と思いながら大いに笑わしてもらった。赤い制服に身を包んだスカイは、真面目な顔で「兄弟たちよ!ギャンブルなどに手を染めてはいけませーん!」と声高に叫ぶ。ネイサンもスカイも、アデレイドとサラのおかげでカタギの人間に変わったらしい。

アーバイドが彼らの結婚式を執り行う。ネイサンは「この女を妻とするか?」と問われ、一瞬黙り込んだ後「ハックション!」とくしゃみをする。アデレイド「します、って。」 アーバイド「ちゃんと答えなさい。」 ネイサンはようやく観念して答える。「はい!」 サラとスカイ、アデレイドとネイサンは抱き合い、アデレイドは客席に向かって白いブーケを投げる。

全員が"Guys and Dolls"を合唱する。スカイ、サラ、ネイサン、サラの4人が鉄の足場に乗り、そのまま上に昇っていく。"Guys and Dolls"の歌が響く中、幕が下りる。

観客は大いに盛り上がって、拍手と歓声が会場中に響き渡る。カーテン・コール。幕が開くと、アンサンブル、準主役、主役の順に挨拶に出てくる。"Fugue for Tinhorns"、"Guys and Dolls"、"Sit Down You're Rockin' the Boat"など重要な歌を担当したナイスリー役のMartyn Ellisが出てきたときには、やはり拍手が一段と大きくなった。それでも最も盛り上がったのは主役の4人、スカイ、アデレイド、サラ、ネイサンが出てきたときだった。みなと手をつないで喝采に応じるクーパー君は、なんと嬉しそうな、明るい笑顔をしていたことか。

彼らがオーケストラのほうを指し示すと、観客から大きな拍手喝采がおくられた。観客がキャストに対してと同じぐらいな称賛の意をオーケストラに示すところも、なんというか、イギリスの舞台公演のいいところだよねえ。

キャストたちは左右に分かれて退場していき、クーパー君はサラ役のKelly Priceをお姫様抱っこして、くるくると回りながら舞台脇に消えた。

(2006年3月19日)


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