Club Pelican

Diary 21

2005年4月15日

このサイトの旧メール・アドレスを差出人に装った迷惑メールについて、経過と結果のご報告です。

下の日記にも書いたとおり、このサイトの旧メルアドを用いた「なりすまし」迷惑メールは、3月上旬から大量に送られてくるようになりました。特に3月中旬から4月初めまでが最悪で、1日に20件近くもやって来ました。

送信元のプロバイダは2社でした。4月7日、私はこれらのなりすまし迷惑メールの送信情報を、送信元である各プロバイダにすべて提供して調査と処理をお願いしました。

この4月7日を境に、このサイトの旧メルアドを使ったなりすまし迷惑メールは1件も来なくなりました。プロバイダからはまだ返事がありませんでしたが、なりすましメールの送信者との契約を解消してくれたんだな、と私は思いました。

一方で、私に送られてきたのと同じ迷惑メールが、他の方々にも送られていたかどうか、私はみなさんにお尋ねしました。幸いなことに、私以外には送られていなかったようです。これで一件落着、と思われました。

ところが、4月9日と11日に、プロバイダ2社から相次いで回答が送られてきました。その内容は、これから調査にとりかかり、自社のユーザーであることが確認され次第、すみやかに厳正な処置を取る、というものでした。

つまり、私になりすました迷惑メールが途絶えた4月7日の時点では、プロバイダ2社はまだ調査もしていなかったのです。なのに、どうしてなりすましメールがいきなり止まったのでしょう。

もしかしたら、迷惑メール業者のメルアド検索ロボットは、毎日マメにネット上を巡回して、掲載されているメルアドだけを拾うタイプだったのかもしれません。

でもすでに実害がなくなった以上、更に追求する必要もないでしょう。やりきれない気持ちは残っておりますが、これでよしとしましょう。ちなみに一連のなりすまし迷惑メールの中で、私が最も爆笑した件名は「オッパイがイッぱい」でした。


2005年4月6日

このサイトのメール・アドレスが変わりました。以後は新しいメルアドからみなさんにメールをお送りいたします。ご面倒をおかけしますが、みなさんもこれからチャウにメールを下さるときには、新メルアド宛てにお願いいたします。

またサイトに表示されているメール・アドレスは、リンクはしておりません。最初は手打ちで(うどんとかそばみたい)アドレスを入力して下さいませ。返す返すもご面倒をおかけして、本当に申し訳ないです。

メール・アドレスの表示位置は前と変わっていません。もしメルアドが表示されず、別のメッセージが出た場合には、ブラウザの画像表示設定をオンにして下さい。

新アカウントはなんかおマヌケで笑えますが、いちおうペリカンの古名です。立派な(?)故事もあるようです。感動的なのか濃すぎるのか、よく分からないお話ですが。

旧メール・アドレスは、じきに契約を解除いたします。それ以降は、旧メルアド宛てにメールを発信しても、エラー・メッセージが来ることになります(偽物の可能性もあるので、開けずに即削除して下さい)。

こうすることにした理由は、下にも書きましたが、このサイトの旧メール・アドレスを差出人に偽装した「なりすまし」迷惑メールのせいです。みなさんに誤解されたくありませんし、ましてみなさんが迷惑を蒙る可能性は排除しなければなりません。それに差出人が自分のメルアドである迷惑メールを受け取るのは、たとえ偽装だと分かっていても、精神衛生上かなり悪いです。

以後はおそらくこんな問題は起こらないでしょうし、起こったとしても原因の特定がはるかに容易になります。メルアドと表示方法の変更で少し手間がかかりましたが、これからのリスクを考えても、結果的にこうしたほうがよかったのでしょう。

仕方のないこと、と割り切るように努力していますが、今日だけは本音を言わせて下さい。私は非常に怒っております。まったくイヤな世の中になったものですね(嘆)。


2005年3月31日

「名作劇場」の「危険な関係」をさっさとすませたいのですが、仕事が忙しくてなかなか時間がとれません。年度の終わりと初めはやっぱり慌ただしいものですね。でも今週末にはなんとか進もうと思います。

忙しさに加えて、最近スパム・メール(迷惑メール)がべらぼうに多く送られてきます。ただのスパムなら削除して忘れちゃえばいいのですが、前にも書いた、差出人名がこのサイトのメール・アドレスであるスパムが、毎日洪水のようにやって来るのです。

パソコンを起動していない時間に発信されているので、これらは私のパソコンが発信しているのではないことが分かります。つまり、第三者(おそらく迷惑メール業者)が、このサイトのメール・アドレスを勝手に偽装用の差出人名に設定して、いわゆる「なりすましメール」というスパムを送ってきているということです。これはいうまでもなく違法行為です。

いいかげんうんざりしたので、本当の発信元を見てみました。案の定、発信元は私のパソコンではなく、第三者のパソコンでした。ネット上でサイトのメール・アドレスを拾われて利用されたのでしょう。ネット上でメール・アドレスを公開すると、こうしたことが起きやすいのです。

どの程度まで対応してくれるのかは分かりませんが、相手が使っているプロバイダに発信元の情報を送って調査と処理をお願いしました。プロバイダが処理してくれたとしても、また同じようなことは起こるでしょう。相手は別のプロバイダに乗り換えればいいだけですからね。

面倒ですが、いずれこのサイトのメール・アドレスを変えるかもしれません。そのときには、今度こそ迷惑メール業者の検索に引っかからないよう、メール・アドレスの表示方法を工夫したり、かぶせものをしたりしなくてはいけませんな。

迷惑メールを受け取ると、大部分の方は見ないで削除するでしょう。それがいいのです。あと、大量に自動送信されたメールの受信を拒否する機能やサービスを使う手もあります。

絶対にやってはいけないのは、「もう送らないで下さい!」などと、迷惑メールに返信してしまうことです。また迷惑メールの「配信の停止を希望する場合は以下までお知らせ下さい」云々の文の下にあるメール・アドレスには、決してメールを送ってはいけません。これは「釣り」です。

それにしても、本当に迷惑な話です。ただでさえ忙しいんだから、やめてほしいですね。余計にイヤなのは、迷惑メールをなぜにスパム・メールと呼ぶのか、その由来です。諸説あって定まっていないそうですが、一説には「モンティ・パイソンのフライング・サーカス」にある、「スパム」コントから命名されたということです。

スパム(SPAM)は豚肉と穀類のまぜもので、青い缶に入っています。たぶん大きなスーパー・マーケットなら置いてあると思います。加熱してあるのでそのままでも食べられます。

欧米では安くてマズい食べ物とみなされているらしく、モンティ・パイソンのコントでは、スパムしか置いていないイギリスの食堂で、北欧のバイキングたちが「スパム、スパム、スパム、スパム、スパム、スパム、スパム・・・」と延々と大合唱します。訳が分からない方は実際のコントをご覧になって下さい。

いつまでも延々と「スパム」と大合唱するというので、いつまでも延々とやってくる迷惑メールを「スパム」と呼ぶようになった、という説があるそうです。あんな面白いコントのネタを、迷惑メールの命名になんて使わないでほしいものです。


2005年3月18日

ある方がおっしゃっていたことには、「危険な関係」サドラーズ・ウェルズ公演のチケットが、すごい速さで売れているのでびっくりしたそうだ。

そこで私もチェックしてみた。確かに発売されてまだ1週間なのに、もう3分の1くらいは埋まっているようだ。よかった。いくらイギリスと日本とが遠く隔たっているとはいえ、日本での評判が彼の地にも聞こえていたのだろう。

今夜は久しぶりにいろんなサイトを巡って、「危険な関係」の舞台を観た人の感想を読んで回っていた。「アダム・クーパー」と「危険な関係」で検索したら、それだけで2000くらいもヒットしたので驚いた。もちろん全部は見られなかった。

んで気づいたのが、ブログがずいぶんと多くなったな、ということ。レイアウトやコンテンツの表示パターンが基本的に同じなので、一見してすぐに分かる。う〜む、これがサイト作成における最先端のツールなのであれば、ここもブログにしないといけないのかな〜、と思って、少しだけブログのお勉強。

ブログの最も大きな特徴は、掲示板に書き込むのとほとんど同じ方法で、容易にサイトの更新ができることと、トラックバックといわれる一方的なリンク貼り付け機能とである。

またウェブマスターがそう設定すれば、掲載された記事にサイト閲覧者がコメントを付けることもできる(?)し、アフィリエイト(サイトで紹介した商品が売れると、いくらかの紹介料がもらえるシステム。Amazonのアソシエイト・プログラムなど)もバンバン導入できる。

HTMLやCSSと格闘しなくてもいい。携帯電話から文章を打ち込んでサイトを更新することができる。デザインやレイアウトだって、基本のテンプレートを変更する設定ボタンをクリックすればいいだけ。フォントやカラーもボタンをクリックするだけで指定できる。

ホームページ・ビルダーにも挫折したわたくしには、まさに至れり尽せり、実にありがたいツールじゃないの!と思った。でもちょっと考えてみる。

ブログは情報を共有するためのネットワークを広げることが主眼のツールだ。従って、関連情報をリンクして一覧できるトラックバックが、その主要な機能である。トラックバックはリンクの一種で、自分がブログに掲載した記事のタイトルや文章の一部(リンク)を、相手のブログの関連記事に一方的に貼りつけることができる。

えっ、それってマズいんじゃないの?と思ったら、他ブログからのトラックバックを受け入れるかどうかは、ウェブマスターが設定できるらしい(あと、スパム的なトラックバックは拒否できる)。

トラックバック自体は面白い機能だと思う。ただし、トラックバックを行なう上での基本的なルールが、一般的なリンクほどには、今はまだ定まっていないように見受けられる。

デザインが簡単に設定できて、更新も容易にできるのは便利だ。でも、デザインのテンプレートがあまりに同じすぎる。レイアウトも多少は変更できるといったところで、結局は似たり寄ったりだし、まだまだ種類や数が限られている。

それに、このブログというツールは、どの程度の将来性を持っているのか。ブログがいずれは主流となるのだろうか?日本は何事においてもアメリカの影響を受けやすいから、ブログも流行しつつあるけれど、将来的にはどうなるのか、現在の時点ではまだ分からない。

あと私がいちばんイヤなのは、1ページの中に、更新記事、更新情報、ダイアリー、バックナンバー、最新のコメント、最新のトラックバックなど、ありとあらゆるコンテンツが、縦3分割とかで、ぎゅうぎゅうにつまっているところである。それに「フォトアルバム、プロフィールだって作れちゃう♪」だあ?もう勘弁してくれ。

というわけで、このサイトの「ブログ移行化計画」は、もっとブログの定着具合をみてから、またあらためて考えることにした。

ブログは大量の情報を一挙に提供できるツールである。あまりに大量すぎる情報は、時に人を混乱させる恐れがある。また「ブログでみんなとつながろう!」なんて、ますます人々のインターネット依存を悪化させるようなツールはいかがなものか。

それに「携帯電話からだって、カンタンに更新できる!」、なんで外出している時にまで、サイトを更新しないといけないの。IT産業って、もしかしてすでにネタが底を尽いてきているのかな。人を必要以上に、過剰にインターネットの世界に引きずり込もうとしている気がする。


2005年3月12日

みなさんもうご存知でしょうが、クーパー君の今後の活動について、現時点で正式に発表されている情報をいくつか。

まずウィリアム・タケット演出・振付「兵士の物語("The Soldier's Tale")」が再演されます。公演期間は2005年5月11、13、14日で、会場はロイヤル・オペラ・ハウス内にあるリンバリー・スタジオ(Linbury Studio)です。アダム・クーパー、マシュー・ハート、ウィル・ケンプの出演は確定しているようです。チケットは2月28日から販売されています。

「兵士の物語」の詳細はロイヤル・オペラ・ハウスの公式サイトでご覧下さい。"Current and Future Events"という文字をクリックすると、これから上演される予定の演目の一覧があります。

それからアダム・クーパー、レズ・ブラザーストン共同演出・アダム・クーパー振付「危険な関係("Les Liaisons Dangereuses")」のロンドン公演が正式発表されました。公演期間は2005年7月21日-8月14日で、会場はサドラーズ・ウェルズ劇場(Sadler's Wells Theatre)です。

「危険な関係」の詳細はサドラーズ・ウェルズ劇場の公式サイトでご覧下さい。右上にある"What's on"から、"What's on"もしくは"Sadler's Wells"を選んで入ると、上演予定の演目リストが表示されます。チケットは3月11日から発売されます。

これはアダム・クーパー公式サイトにも掲載されました。アダム・クーパーはもちろん出演予定ですが、クーパー以外のキャストについては、いずれ発表されるとのことです。

日本で初演されたという理由で、イギリスの人々が感情的な先入見や偏見に左右されずに、あの舞台を観てくれることを望みます。クーパーを信用しなかったのは、他ならぬイギリスのプロデューサー、劇場関係者たちでした。クーパー自身は、まずイギリスの人々にこそ、最初にあの舞台を観てほしいと願っていたのですから。

クーパー君が、日本のファンを非常に尊重した発言をしてくれることには、本当に感謝しています。でも、彼はやはり彼のホーム・グラウンド、イギリスのファンを最も大事にするべきだと私は思います。「危険な関係」がイギリスでも成功することを祈っています。


2005年3月11日

みなさんを怖がらせるようなことには触れたくないのですが、必要なことは書かなくてはなりません。先日、セキュリティ・ソフト製作会社のソースネクスト(SOURCENEXT)さんから、いつもの「新種のウイルスが発生しました、ご注意されたし」メール(3月8日付)が届きました。

ウイルスのほとんどは、メールに添付されたファイル(ウイルス本体)をダブルクリックして開く(実行する)ことで、パソコンをウイルスに感染させてしまうタイプです。でもちょっと珍しいウイルスが発生したようです。「ファットソ・A (Worm.Fatso.A)」というウイルスです。ソースネクストさんからのメールを引用します。

どんなウイルス?「MSN Messengerの機能を利用して、URLリンク付きのメッセージを送信します。受信者がURLリンクをクリックすると、ウイルスがダウンロードされてしまいます。心当たりのないメッセージが届いたら、その中のURLはクリックせずにメッセージを削除してください。」

感染したらどうなる?「MSN Messengerのオンライン中の連絡先リスト全員に、ウイルスのダウンロード先URLリンクを含んだメッセージを無断で送信します。また、特定のwebサイトへのアクセスが妨害されてしまいます。」

つまり「ファットソ」は添付ファイルではなくて、メール本文にURLリンクが貼ってあり、そのURLをクリックすると、そこからウイルスが自動的にダウンロードされる、というタイプのウイルスです。アクセスが妨害されるという「特定のwebサイト」とは、オンライン・セキュリティ・サービスを行なっているサイトを指すようです。セキュリティ機能も無効化してしまうんですね。

ソースネクストさんに限らず、他のセキュリティ・ソフト製作会社も、すでにこの「ファットソ」を駆除するシステムを提供しています。ただ、ウイルスがダウンロードされるURLを事前に検知して削除できるのか、それともウイルスに感染してしまった後の駆除のみが可能なのかがはっきりしません。

もうHTMLメールや添付ファイルのウイルスで感染させることは難しいので、こういう新手のウイルスが出てきたのでしょう。でもこの手法はウイルス以前に、すでにスパム・メール(迷惑メール)で用いられています。

いきなり親しげな件名のメールが来る。誰だったかな、と思って開く。そしたらいきなり出会い系とかアダルトサイトとかに繋がった、という経験はありませんか?件名が親しげなのは、知人の誰かだと思わせてメールを開かせるのが目的です。ただの宣伝ならまだいいのですが、これが最近横行している架空請求、フィッシング詐欺に悪用されています。

私のパソコンは3重の網を張っていますが、ウイルス付き、もしくはスパムだと思われるメールについては、警告がなくても開けないで削除しています。ウイルス・メールの大きな特徴は、(1) 差出人名が外国人の名前、もしくはメール・アドレスである、(2) 件名が外国語や空白、また"re:"、"fw:"のみ、(3) 添付ファイルがある、です。

スパム・メール(またウイルス感染・詐欺目的のメール)の特徴は、(1) 差出人名がメール・アドレス、また特に出会い系・アダルトサイトへのアクセスを誘導するスパムは、差出人名が女の名前、(2) 件名が曖昧かあるいは唐突で、心当たりはないけどなんだろう?と思わせるもの、です。

そこでみなさんにお願いなのですが、いや、メールを頂く立場でこういうこと書くのは、傲慢で無礼千万なのはよく分かってるのですが、それでもみなさんの安全のためにもお願いします。

私にメールを送って下さる際には、まず差出人名を設定して下さい。差出人名がメール・アドレスの場合、まず開けることはありません。そして件名は、スパムではないと分かるような内容にして下さるよう、どうかお願いいたします。

以前からメールを頂戴している方々であればともかく、初めてメールを送って下さるときに、差出人名はメール・アドレス、件名は「こんにちは」、「はじめまして」の類だと、やはり怖いので開けずに削除してしまいます。

逆に、差出人名は私のサイト用メール・アドレス、件名は英語とか空白とか意味が曖昧で唐突なもの、また添付ファイルがある、というメールは、絶対に開けないで削除して下さい。先日、差出人名は私のサイト用メール・アドレス、件名は「リニューアル・オープン!」という奇妙なメールが送られてきました。

ウイルス・メールを勝手に送信させない制限もかけていますが、念のためパソコンの全ドライブをスキャンしました。幸いに感染はしていませんでした。

となると、これは私のサイト用メール・アドレスが、ネット上で無作為に拾われて、スパム・メールの差出人名として悪用されたか、あるいは、どなたかのパソコンがウイルスに感染しており、そのパソコン内に私のサイト用メール・アドレスが記録されていて、それが偽装用の差出人名として抽出された、ということが考えられます。

私は自分のサイトの宣伝メールは送りませんし、差出人名がメール・アドレス、ということは絶対にありえません。また差出人名がメール・アドレスではなくとも、「なんかヘンだな」と感じたら開けないで削除し、私に確認のメールを下さい。みなさんもどうかご注意下さいませ。


2005年3月4日

「危険な関係」について、公演を観た直後の感想はこの日記に書いたからいいとしても、全体のまとめはどうするのか、まだ迷っております。「まとめ」というのは、あの舞台に誘発されたいろいろな感情なり考えなりが、まだ自分の中に沈んでいるからです。

あの舞台は本当にいい舞台でした。深く感動し考えさせられた良い思い出は、いつまでも心に残しておいていいでしょうが、その一方で、あの舞台は非常に重たい辛いものを観る側に感じさせました。これはきちんと整理して、表現という形で外部へ排出するべきでしょう。

みなさんのメールを読んでいて、私がこのサイトでまだ書いていなかった印象や感想と同じことが書かれていたときは、本当にびっくりしたものです。

その一つは、あの舞台に含まれている情報量が格段に豊富だったということでした。私はこれまで、音声言語や文字言語と同様、「ボディ・ランゲージ」も非常に限定的で相対的な記号である、と考えていました。

たとえば「手足を大きくバタつかせる」が「怒り」を意味するには、観る側が「怒りの表出方法の一つには、手足をバタバタさせる動きがある」と知っていなくてはなりません。また「肩をすくめてうつむく」が「怖れ」を意味するには、観る側が「怖れの表出方法の一つには、肩をすくめてうつむく仕草がある」と知っていなくてはなりません。これが限定的だということです。

更に「手足を大きくバタつかせる」と「肩をすくめてうつむく」は、切り離すことができません。両方が同時に存在してはじめて、「怒り」と「怖れ」という相反する意味を示すことができます。切り離せばどちらも意味を持つことはできません。相対的というのはこういうことです。

ですがあの舞台は、非常に限定的なジェスチャー、マイムを極力排除して、普遍性の高い簡単なジェスチャーやマイムだけを採用しました。またあらゆるダンス形式の中で、非常に限定的な振りもほぼ排除しました。単純なジェスチャーやマイムだけを用い、あるいはそれらをダンス化して、更にところどころにあらゆるダンス形式の振りを織り込んでいました。

これらの動きや振りを何度も繰り返すと、それらに相対的な意味を持たせることができ、観客はやがてそれらの意味を悟るようになります。こうすることによって、コミュニケーション的にも見た目的にも、大きな実効が得られることは認めざるを得ませんでした。

クーパー君のいわゆる「ダンスはユニバーサル・ランゲージ」論には、私はやはり賛同しかねます。でも今は昔と違って、日本人もある程度、欧米の「ボディ・ランゲージ」を共有しており、またその意味を知っているのだな、と私自身の観劇経験から実感しました。日本公演がうまくいった背景には、こうした事情もあったと思います。

本筋に戻ると、「危険な関係」のまとめは、あの情報量の多さから考えて、まず舞台のストーリーやパフォーマンスについては「名作劇場」に書いたほうがよさそうです。あの舞台によって私が考えさせられたことは「雑記」とかに書くだろうと思います。いずれにせよ、分けたほうがいいですね。

あ、最後にもうひとつ。「危険な関係」を日本で初演したのは、結果的に適切な選択だったと思います(選択というよりは、スポンサーの問題で日本で初演することになったわけですが)。なんでかというと、日本人は感受性が豊か、というのは褒め言葉で、日本には「以心伝心」の習慣が根強くあるからです。

この「以心伝心」の習慣には良い面もあれば悪い面もありますが、今回の「危険な関係」では良い方向に働きました。観客は与えられる大量の情報に加えて、「言外の意味」を汲み取ろうとしていたし、登場人物やストーリーの中に感情的に入り込んだからです。

この舞台を観た方はかなり疲れたのではないかと思います。上演される作品が、みんなこんなタイプだったらたまったもんじゃありません。でも時にはこうした作品に触れるのもよいものです。ただしフォローもお忘れなく。陽気で楽しい舞台、映画、テレビ番組などを観て、気持ち的にバランスをとりましょう。


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