Club Pelican

BIOGRAPHY

番外編 酒井はな&アダム・クーパー インタビュー

2009年1月21日、同年9月17〜26日に東京で上演される「On the Town〜踊る大紐育〜」に主演する酒井はなさんとアダム・クーパー(彼は振付も担当)の合同ミニ・インタビューが行なわれました。主催元のアンコールズ・ジャパン社さんのご厚意で、その様子を見学することができました。

以下にその質疑応答の内容を簡単にまとめました。ただし、当日の現場はいろんな人が順不同に発言し、また日本語と英語が同時に飛びかっているという状況でした。

よって、発言者、発言の内容は、あくまで私が自身のメモと記憶に頼り、更に頭の中で整理した上で書きました。発言者を誤っているかもしれませんし、発言もその人の言葉をそのまま記録または逐語訳したのではなく、大体の意味を書いたにすぎません。更には、私の理解が間違っているところもあると思われます。このことをあらかじめおことわりしておきます。

問:オーディションの参加者は合計でどのくらいでしたか。またその主な年齢層は?

関係者:全部で280人ほどが参加しました。20〜30代が中心でしたが、もっと上の年齢層の人、たとえば50代の方もいました。

関係者:アダムさんと酒井さんに一言ずつ挨拶をお願いします。

アダム・クーパー(以下「クーパー」と略):日本に戻って来られて嬉しいです。僕は日本が好きで何度も来たことがありますが、今回は最後に来てから最も長い時間が経っています。ですから本当に嬉しいです。

酒井はな(以下「酒井」と略):私はクラシックのダンサーなのですが、最近はミュージカルにも出ています(チャウ注:劇団四季『コンタクト』イエロー・ドレスの女)。今回、アダムさんと共演できて嬉しいです。雲の上の人でしたから。夢のようです。

問:今回のオーディションでは、クーパーさんがお一人で審査されたのですか?

関係者:基本的にはアダムさんと助手のトムさんです。主なスタッフも立ち会いました。今回のオーディションはダンサーのみのオーディションで、セリフをしゃべって演技するキャストのオーディションは、また別個に行なわれるのです。ダンサーはダンスオンリーです。もっとも、酒井はなさんだけが唯一、踊りの他にセリフもしゃべります。アイヴィ・スミスの役です。

問:ダンサーの数はどれぐらいですか?

クーパー:10人から12人です。彼らのほとんどはダンスだけを踊ります。一部の人は歌いますが。そのために、すばらしい人材を集めました。

問:日本のダンサーはどうですか?

クーパー:すばらしかったです。ただ、私たちは求めるダンサーの条件を具体的に決めていましたから、(オーディションを受ける側にとっては)厳しかったでしょうね。

問:条件とは何ですか?

クーパー:まず、バレエのテクニックがあることです。また、ジャズ・ダンスも踊れることです。そして、強い個性を持っていることです。なぜなら、体が動いているだけの踊りは退屈なものです。踊りで心や感情を表現できなければなりません。そんな踊りに人は感動するのです。ですから、人を感動させることのできるダンサーを必要としたのです。

問:公演で踊られるのは、どのジャンルのダンスなのですか?

クーパー:ジャズ・ダンスがメインです。音楽がジャズ風ですから。でも、ベースはバレエです。

問:バレエがベースのダンサーが踊るジャズ・ダンスと、本来ジャズ・ダンスがベースのダンサーが踊るジャズ・ダンスは、具体的にどう違うのですか?

クーパー:それは難しい質問です。・・・僕はクラシック・バレエを主に踊っていましたから、相手もバレエをベースにしたダンサーだと、たとえば腕の使い方(言いながら両腕を広げる)、脚の使い方、首や上半身の使い方(言いながら首を伸ばし、胸を張って胸元を両手で示す)が同じです。そうすると、僕が求めていることが相手に理解しやすいし、僕が目指すところと、相手が目指すところの方向性も一致しやすいのです。

問:この「On the Town」では、ダンスはどんな位置を占めているのですか?

関係者:多くのミュージカルとは大きく違います。ダンスは単なる添え物ではないのです。

クーパー:「On the Town」はダンスが多くあるミュージカルであり、ダンスによって物語が進んでいきます。オーケストラが舞台の上にいるというのも、ダンサーにとってはいいことです。ストーリーも面白いです。3人の水夫が、24時間以内に恋人を探し当てなければならない、という物語ですから。

問:振付と主演を同時にやる、というのは大変ではないですか?

クーパー:はじめは大変でした。でも今では、振付と主演、振付と監督、振付と監督と主演という同時作業にも慣れました。

問:酒井さんとクーパーさんは以前に組んだことがありますか?

酒井、クーパー:ありませんね。

酒井:アダムさんのようなダンサーと共演できるのは、幸せで夢のようです。

問:酒井さんは『コンタクト』でイエロー・ドレスの女を演じられましたが、ミュージカルに出演するにあたって、ヴォイス・トレーニングの訓練を受けたりなさっているのですか?

酒井:はい、自分でも毎日欠かさずしています。

関係者:酒井さんはセリフとダンスの両方をなさいます。

問:酒井さんとクーパーさんの、お互いの第一印象は?

クーパー:美しい!すてきだ!

酒井:あこがれのスター!

問:「On the Town」の著作権はどうなっているのですか。ジェローム・ロビンスにはないのですか。

関係者:ロビンスには「On the Town」の著作権はありません。なぜかというと、ロビンスはまだ若いころに「On the Town」の振付をやったので、晩年になるとそのことを忘れてしまったのです。もちろん、「ウエスト・サイド・ストーリー」は別です。あれはロビンスの振付でなくてはなりません。バレエの「ファンシー・フリー」も同じです。ですが、「On the Town」をリバイバルしようとしたときに、ロビンスは自分がこの作品の振付をしたことを覚えていませんでした。去年のニューヨーク公演の際には、ロビンスとつながりの深い振付家が再振付しました。本来はロビンスが振付したのだから、ロビンスと関係の深い振付家が担当しなければならない、という雰囲気になっていたのです。ですが、日本公演に関しては、そのような制約は特に課さない、というのがあちら側の意向です。

問:舞台版と映画版は違うのですか?

関係者:まったく違います。特にバーンスタインの音楽は、有名な「ニューヨーク・ニューヨーク」を除いて、ほとんど違います。舞台版の音楽は、映画の観衆にはとっつきにくいと判断されたのです。でも、舞台版の音楽のほうがはるかに優れています。

問:クーパーさんは舞台版を観たことがありますか?

クーパー:ありません。映画だけです。

問:「ファンシー・フリー」は観たことがありますか?

クーパー:ありますよ。

問:振付に際して、ロビンスの「ファンシー・フリー」を特に意識することはありますか?

クーパー:いいえ、ロビンスのスタイルを意識するつもりはありません。音楽のイメージを最優先します。

問:振付はどうやって思いつくのですか?

クーパー:あるときには音楽を聴いているうちに、あるときには絵画や映像を見ていると、振付の形が浮かんできます。あるときには電車に乗っていて、また車を運転していても、ふと振付のアイディアが浮かぶこともあるんですよ。ただ、振付の大体のベースはすでに頭に浮かんでいることが多いのです。あとはリハーサルで、ダンサーたちと試行錯誤しながら、細かいところを決めていきます。

問:振付のアイディアが出なくて苦しいときはありますか?

クーパー:(笑いながら)いつも苦しんでいますよ!でも、苦しい中にも、良いことは少しでもあるものです。苦しくても必ず何かを生み出すことができるんです。これは、何事においても同じではないでしょうか。

問:酒井さんとのパ・ド・ドゥの見せ場などはあるのですか?

クーパー:ええ、ありますよ。

問:舞台で、クーパーさんは水兵服を着るのですか?

クーパー:(笑って)もちろんです!(頭に手をやって嬉しそうに)水兵帽もかぶりますよ!

問:「On the Town」といえば、誰でもジーン・ケリー(映画版に主演)をイメージします。ジーン・ケリーに勝つ自信はおありですか?

クーパー:(きっぱりと)もちろんです!(真顔になって)・・・確かに、この役ならこの人、というイメージを人々は持っているものです。ただ、僕が「雨に唄えば」をやったときもそうでしたが、僕がステージに立っている間だけは、ジーン・ケリーのイメージを忘れて、舞台を楽しんでほしいのです。

問:クーパーさん、酒井さん、ファンのみなさんにそれぞれメッセージをお願いします。

関係者:(笑って)最初の挨拶と同じになるから(くり返さなくても)いいでしょう。

クーパー:いえ、言いますよ。(真面目な声音でゆっくりと)日本に帰って来ることができて、とても幸せです。日本のファンのみなさんにお会いできることを楽しみにしています。

酒井:私にとっては新しい挑戦です。アダムさんと一緒によい舞台を作りたいです。共演できることに感謝します。

この後は写真撮影となりました。

アダム・クーパーは相変わらずニコニコして上機嫌でした。通訳の方がいるのですが、必ず質問者のほうをまっすぐに見つめて答えていました。あの真剣な目つきを見て、アダム・クーパーはぜんぜん変わってない、誠実な人柄は以前とまったく同じだ、と確信しました。

ちなみに、彼は日曜日(1月18日)に来日して、木曜日(1月22日)にロンドンへ帰るそうです。本当に忙しい日々を送っているんですね。オーディション、お疲れ様でした。

最後に、アンコールズ・ジャパン社の特別なお計らいに感謝いたします。

(ブログ〔2009年1月22日分〕より転載)


このページのトップにもどる